サイトや出版物に載せる写真と著作権

普段の仕事のなかで、著作権の話題がでることがある。はじめ「私は法律が分からないから」と敬遠していたのだが、表現を専門とするからには、避けて通ることはできない。著作権法以外にも、不正競争防止法や、独占禁止法、なかでも景品表示法などは、勉強しておく必要がある。

ある日、公園等にあるオブジェの写真を撮影してサイトや印刷物に載せるのは大丈夫か、という話題になった。これについては、「はたらくじどうしゃ」事件、というのが参考になった。「はたらくじどうしゃ」事件とは、バスの車体にペイントしたアーティストが、そのバスの写真を掲載した書籍を出版した者に対し、著作権を侵害しているとして損害賠償を請求した、というものだ。

判例では、そのアートが「屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物」といえるか?という事や、出版した人は複製物の販売を目的として複製したのか?という事が問題になっていた。

「屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物」には、建物や、屋外のオブジェや、建物などにペイントされたアート等が該当する。著作権法第四十六条(註)により、いくつかの例外を除き、サイトや印刷物への利用が認められている。そういったアートが写真に写っただけで裁判沙汰になってしまっては不便なので、そうしたアートが写っていても、著作権法上問題にならない、としている。

しかし、写りこんだのではなく、メインで撮影された場合については、第四十六条の四項や他の条項を見ながら総合的に判断するしかない。「はたらくじどうしゃ」事件のように、「教育」などの目的があり、それにあわせて監修されているような場合は、OKらしい。教育ということなら、第三十三条も考え合わせて判断すべきかもしれない。結局、「はたらくじどうしゃ」の出版販売は、第四十六条にてらし、著作権法上問題ない、という結論になったようだ。平成13年(ワ)第56号(PDF)

屋外の場所に恒常的に置かれているか?→バスは、置かれているわけではないが、人が容易に見ることのできる場所に日常的に存在する。したがって、四十六条が適用される。
複製物の販売を目的とした複製か?→販売してはいるが、幼児の教育目的で監修が行なわれており、当該著作物を販売する意図で複製したものではない。したがって、著作権法違反とはならない、ということのようだった。

オブジェ等を撮影したものを企業のホームページやパンフレットに載せる場合、仮に問題ないと思っても、作者や関係者に問い合わせるのが望ましいと思う。その方が安心して載せられるし、それをきっかけに、その企業の商品やサービスに興味を持っていただくことができ、思いもかけない相互リンクが可能になることもある。「知りませんでした」と言ってすぐに引っ込めればいいだろう、という人もいるが、誠意を尽くして問い合わせる過程がチャンスにつながるという考え方もある

参考:
平成13年(ワ)第56号 損害賠償請求事件(はたらくじどうしゃ事件)(PDF)
著作権法 (昭和四十五年五月六日法律第四十八号)最終改正:平成二〇年六月一八日法律第八一号

第四十六条  美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四  専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

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